クリスティーヌは、建築ライター。大人向けの建築専門書籍から、子供にわかりやすく建築を説明する絵本の執筆まで、実に幅広く活躍している建築ライターです。そして、フランスや海外で大活躍している建築家であるベルナール・デムラン(Bernard Desmoulin)さんの奥様でもあります。
ベルナールさんは、サルブールの郷土博物館や、在メキシコフランス文化館などの設計、パリのアールデコ美術館のセノグラフィーなどの設計を手がけてきた実力派建築家です。建築通の二人は、つい最近パリの一区に引っ越してきたばかり。それまでは、パリの郊外にある前衛モダーン・ヴィラ《エンヌビック邸》に住んでいました。
彼らが住んでいたヴィラをつくったのは、フランソワ・エンヌビック(1842-1921)。19世紀から鉄筋コンクリート建築を誰よりも早く手がけたパイオニア的建築家であり、鉄筋コンクリートによる建築法を世界40カ国以上に普及させた実業家でもありました。エンヌブリックは、1882年にはコンクリート建築のパテントも取得しています。
彼女たちが住んでいたこの《エンヌビック邸》は、1901年の作品。「現代建築の祖」と言われているル・コルビジェよりも30年以上も前の作品ですから、ずいぶん先見の明があったと認めざるをえません。
「花と光と風」がエンヌビックの建築のイメージだったので、屋上庭園と温室、そして40mの高さの給水塔もこのヴィラには設置されていたそうです。とにかく、19世紀を代表するモダーン空間に住んでいたわけですから、建築家としてこれにまさる悦楽はないでしょう。