「同棲していた彼女と別れてしまった」というアントワーヌ。突然家を出て行く羽目になり、マレ地区にある小さなギャルソニエをとりあえずの仮住まいをする羽目に。ここは、最上階のいわゆる「女中部屋」で、24平米のワンルーム。パリでは、19世紀までは、メイドやお手伝いさんの住む場所は屋根裏でした(ちなみに、20世紀入ってル・コルビジェなどに代表されるような近代建築ができると、女中たちの住処は最上階から、最下階へと移ります)。
このアントワーヌの部屋のような最上階の女中部屋は、屋根のすぐ裏にあるので、冬は寒く夏は暑いのが難点なので、他階よりも断然、家賃は安いのです。でも、窓やヴェランダからの眺めは最高で、アントワーヌのヴェランダからは、屋根伝いに散歩する猫や、セーヌ川、それに教会のシャペルなども見えます。彼は、毎朝、ヴェランダにビーチ用の白いプラスティックの椅子を並べ、ここでコーヒーとタルティーヌの朝食をとっているというから、なかなか優雅な独身生活。
「料理? スクランブルエッグぐらいだよ」という彼の部屋には、お鍋がひとつ、フライパンもひとつ。ご覧のように、キッチンというよりも、流しにコンロを置いただけのキッチンコーナーですが、一応、お客さんが来たときには、天井から吊る下げた簾ロールでコーナーを隠す配慮もされています。