石の家に住むナイマたちの家は、土の家のミナたちの家から車で10分ほど離れた場所にあります。やはり、塀で囲まれた小さな村に囲いがされ、こちらには10世帯が住んでいます。
村の基本的な構造は土の村と同じで、共同台所とハマムが敷地の中央にあり、井戸から汲んできだ水が台所のそばに置かれています。
彼女のクサール(集落)もミナのクサールと同様に立ち退きするように命令されています。
――立ち退きといっても、どこに引っ越すかわからない
とナイマのパパは悲しげに遠くを見つめていました。
ナイマの集落には、都会では消えつつある生活習慣が残っていました。
たとえば、3度ではなく、一日4度の食事。オオムギのスープで朝をスタートし、10時ごろに甘めのミントティーとビスケット、昼食のタジンヌ。
夕方の軽食(お米や麺などの消化によいもの)。週に1度のスーク(市場)での買い物はもっぱら父親の仕事です。
ミントティーは、甘すぎるほどに砂糖を入れます。茶葉は、中国から輸入した「珠茶」。火薬のような形をしているので通称「ガンパウダー」と呼ばれていますが、緑茶です。
19世紀にイギリスの東インド会社経由でモロッコにもちこまれまたものなので、実はモロッコの古い「伝統」ではありません。強く焙煎され、かなり渋みがあります。これに葉の付いた生ミントの茎を折って入れ、砂糖をどっさり入れ、火にかけてぐらぐらと煮立てたものがミントティーです。
また、日本や中国とは違って、できるだけ高い位置からポットのお茶をコップに注ぐのがミントティーの作法。泡が多くたてばたつほど、上質なお茶とされていますが、その信憑性は…。