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カトラーと東京町家の往復書簡

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●2007年10月21日(日曜日)
旗を立てましょう

 
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迎川さん、ここ数日ですっかり秋めき朝晩冷え込むようになりました。お元気ですか。
地球温暖化の影響が出始めているのか、やたらと暑さが身にこたえた夏でしたが、迎川さんが見たという「悪い夢」には、正直ゾクッとさせられました。小生のブログの方にも紹介させていただき、迎川さんの描いたホラーストーリーに私なりの意見を述べさせてもらいましたが、ゾクッとさせられたのにはいくつか理由があります。

ひとつには、住宅業界の未来について、既にシナリオが描かれレールが敷かれているのだということが、迎川さんの文章を通じてはっきりとわかったことでした。耐震偽装問題が生じ、社会問題化した時点では、先を見通している御仁は、さすがにいなかったと思いますが、ある時点でシナリオを書き始めた人間がいたということでしょう。日本の役人はバカじゃありません。改正建築基準法をめぐる問題では、表面的には役所の怠慢、無能さがあらわれたように見えていますが、実はしっかりと計算が働いています。家づくりの現場にコンプライアンスを持ち込み、それを踏み絵にして、工務店を選別する、あるいは切り捨てるという政策が動き始めたということです。

残念ながらというか、悔しいことに、産業政策としては、文句のつけようがありません。マーケットが縮小し、今後、過当競争と淘汰が進むのですから、業界全体の共倒れを防ぐには何かを基準にして、退場するものと生き残るものを線引きしなくてはなりません。そこで、耐震偽装問題で盛り上がった社会的な批判を逆手にとって、コンプライアンスの旗を掲げ、業界の再編や淘汰を一気に進めるつもりなのでしょう。マーケットの縮小に見合った形で淘汰が進み、生き残ったビルダーが、コンプライアンスを重視する大人しい存在であれば、役所としては、なおさら結構ということでしょう。こうした業界再編の下図があらかじめ描かれているとすれば、改正建築基準法をめぐる問題で今後も当局が、現在の頑なな姿勢を軟化させる可能性は低く、来年末に予定されている4号特例の廃止までこの調子で突っ走るつもりだと思います。

もうひとつ、背筋がゾクッとさせられたのは、グローバル化の流れが、いよいよ、ここまでやってきたか!ということでした。米国のサブプライムローン破綻は、どこか他人事のように受け止められていましたが、ノンリコース型の住宅ローンの導入が進められれば、否応なしに日本の住宅産業はグローバル経済の奔流に巻き込まれていくでしょう。それは、「護送船団」に守られていた1000兆円ともいわれる日本の個人金融資産の流動化を住宅金融を通じて企む「米国の陰謀」といえるのかもしれません。しかし、迎川さんも指摘されているように、ノンリコースローンの導入によって、これまでのように子々孫々までローンの取り立てに追いかけられなくて済むなど、住宅購入者にとっては、朗報になる要素もあります。米国におけるサブプライムローンの破綻と同じようなことが日本でも発生するのではという懸念もありますが、年収制限など、個人の返済能力の審査も加味することにすれば、「日本版サブプライムローン」の導入への大きな反対理由にはならないでしょう。
安くて、便利なもの、自分にとって都合の良いものがグローバル化の恩恵としてもたらされるとしたら、基本的にそれを歓迎するというのが生活者というものです。例えば、グローバル化の波によって、安い米や農産物が押し寄せてきて、日本の農業は瀬戸際に立たされています。しかし、例え日本農業の危機について認識していたとしても生活者は、安くて品質の良い米であれば、迷い無く外国米を選択するでしょう。家についても同様です。安くて品質の良いものなら、米国だろうがEUだろうが、どの国の息がかかっていたとしても、グローバル化の恩恵を知ってしまった生活者にとって、それはどうでも良いことです。

もう少し大きな目で捉えると、たぶん、このことは、住宅産業だけでなく、全ての産業領域や生活文化領域で私たちが直面している普遍的な問題であることがわかります。物事をあまり図式化することは危険だとは思いますが、このことは、例えば、以下のような対立図式として捉えられるのではないでしょうか。

ローカルvsグローバル
スローフードvsファーストフード
共生vs独占
文化vs文明
環境重視vs効率重視
多様性vs標準化
コモンセンスvsコンプライアンス

さて、ここで、あえて挑戦的な物言いをさせていただければ、日本の住宅産業や、その中核を占めている工務店の皆さんにとって、現在、置かれている状況は、上に示した「対立図式」以前、対立図式そのものを構築できていない状況にあるといえるのではないでしょうか。
イタリアに源を発するスローフード運動は、マクドナルドなどに代表されるグローバル企業による食の同質化、独占化に抗して、地域の食文化や食材を守るという視点に立って構成され、世界的な運動として広がっていきました。同じような旗印が、工務店の皆さんが手がける家づくりの現場にも必要な気がします。
「あたり前の家」とは、その点を意識した運動なのかも知れませんが、地域の環境や文化に根ざした家づくりを進める工務店の皆さんの仕事を、マクドナルドのハンバーガーと同列には論じさせないための「旗印」が必要なのではないでしょうか。別の言い方をすれば、コンプライアンスをいいながら、実は責任回避と保身だけをいっている役所の理屈を上回る「旗印」といってもよいでしょう。

旗を立てることが必要です。


コメント

2007年10月22日 13:27 by カトラーの読者

何に対立していいのか、わからない工務店。カトラー節炸裂ですね。行政なのか、ハウスメーカーなのか、職人なのか、はたまた施主なのか。本当のところ、工務店は工務店に対決しているのではないでしょうか。それじゃ、「旗」まで遠いな。




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