加藤さん、しばらく間が開いてしまって申し訳ございません。夏バテにやられていたわけでも建築基準法改正問題で翻弄されていたわけでもありませんが、どちらも大変な今年の夏でした。
さて、下町の大工の棟梁が「法律で家は建たない」と言っていたのは、洒落ではなく本当に「法律で家が建たなくなってしまいました」。基準法改正の影響で建築確認が下りず、とうとう8月の住宅着工戸数は、対前年度比マンションで63.2%減、戸建住宅で32.9%減になってしまいました。着工できないと言うことは、今後職人に仕事が発注されないと言うことで、このブランクをどうやって埋めようか頭の痛いところです。運用基準も構造計算ソフトも未完のままで法改正に突入してしまったと言う、国の大失態が混乱の原因です。責任回避のために業務をサボタージュする役人らには税金から給料が支払われ、仕事にあぶれた職人は収入がなくなるのです。マンション関係の労働者の3人に2人、戸建関係の労働者の3人に1人が食えなくなる勘定です。
こんな実態を知らされない普通の市民は、法律をもっと厳しくして建築の手抜き工事等の不正が起きないようにして欲しいと言う。姉歯問題を他人事のように冷ややかな目で見て、積極的に問題解決に乗り出そうとしなかった建築業界が、市民から「いい加減な悪党ばかりで信用の置けない業界」と烙印を押されてしまった結果かもしれません。私達も大いに反省しなければなりません。
不心得者はどんな業界にも、例えば医者にも弁護士にも国会議員にも役人にもいます。年金問題を見れば明らかです。そんな一部の不心得者のせいで、職人の生活が脅かされたり市民の不信を買ったり、更には検査や保証といった制度が創設されたりと、家づくりがとても複雑で不自由でつまらないモノになってきているのは困ったものです。複雑にすれば限られた建築コストの中から、ものづくりに掛けられるお金が削られて非生産的なことに時間と金が回されます。検査1つ取っても建築・保険・性能保証・融資等々幾重にも行いその費用だって馬鹿になりません。そしてそれを負担するのは家を建てる市民なのです。もっともっと情報公開をして、誰でも自分が信頼できる工務店を選べるようになれば、こんな無駄なことは必要なくなるのです。下町の棟梁は「ここで下手なものつくったら、この街で飯が食っていけなくなる」って言うでしょう。情報が直ぐに伝わる社会システムですから、信用を大事にしているんですね。だから誰も見ていなくても手が抜けないのです。非生産的なことに無駄遣いしないから、キチンと収入が得られ社会全体が潤うのです。
悪い夢を見てしまいました。これは夢ですからあくまでもフィクションです。
A;両国の経済発展のために取り交わした年次要望書に従った法改正は進んでいるんだろうな!
N:・・・それが、大蔵がなかなかいい顔しなくて・・・努力しています。
A:そんな事言ってるからだめなんだよ。我が国が大恐慌の時どんな政策を採って社会秩序を立て直したか知っているだろう。今それを断行しなきゃ、あなたの国の将来は無いね。
N:ニューデール政策はもちろん知っていますが、なかなか日本の社会に馴染まなくて・・・。
A:大蔵に遠慮して、未だに人の命を担保に住宅資金を貸しているなんて、話にならんよ!
N:それは判っているんですが・・・なにしろ大蔵が。。。
A:その結果がどうだ。保証責任能力も無い建築家や工務店がはびこり、いい加減な家をつくるから、住宅は使い捨てにされちっとも社会ストックにならないのだよ!ニューデール政策を断行した我が国は、平均で75年以上の住宅耐用年数なのに、日本はその3分の1しか持たないじゃないか。いつまでこんな無駄を続けるつもりだ!
N:早急に国会に建築基準法改正案を提出して・・・。
A:法案が通る見通しがあるのか?今回だけはなんとしてもノンリコースをやってもらわないと困るんだ。こっちとしても、サブプライムがかなりやばい事になっているんだ。時間が無いんだよ!
N:はぁ、早急に善処しますので・・・。
A:そんなんじゃ困るんだよ、日本の金融は大蔵が守ってくれたおかげで、よだれが出るほど美味しい市場になっているんだからな。ちょっとこっちに来なさい・・・・・・。
N:え~ぇっ・・・そんなぁ、無理ですって。大変なことになりますよ。
A;じゃ、他に名案があると言うのかね。
N:いや、それは・・・。
A:やる気ないんじゃないか!耐震偽装しているマンションの一つや二つあるだろう。直ぐに探せ!
N:は、はい。判りました。
A:もう一度言う、人の命を担保に金を貸すのは間違えだ。きちんとした建物の建築基準を創り厳格な検査を行い、資産価値のある住宅にして住宅自体が担保になるようにしなくては社会資本にならない。長期に渡りその機能を維持し資産価値が残る家をつくる為のチェックリストを早急にまとめなさい。ニューデール政策の時に創った基準があるから、これを下敷きにしなさい。
N:はぁ・・・。
A:欠陥マンションで不安を煽れば、マスコミも動き、大蔵だってノンリコースを認めないわけにいかないだろう。ローンのために危険なマンションに住み続けるなんて馬鹿げている。ノンリコースにすれば、欠陥マンションから出てしまえばもうローンから開放されるんだから、新しい生活に歩み出せるんだ。
N:なるほど・・・。
A:これで日本からわけのわからん粗悪な住宅も無くなり、社会ストックが重ねられる。そうなれば我が国の金融機関が大手を振って住宅市場を席捲できる。
N:でも、アメリカの住宅市場では住宅専門の建築家は存在しないのでは?業界が黙っていないでしょう。
A:厳しい検査制度や確認制度をつくって、業務を複雑にすればそこに仕事が生まれるだろ。どっちみち社会の役に立たない連中なんだから、そういう受け皿を作れば何も言わんさ。
N:アメリカではデベロッパーが主に住宅をつくっていますが・・・。
A:日本だって、もうハウスメーカーも窒息状態だろう。統廃合して幾つかのグルーピングにして、健全な競争原理が働くようにしなさい。工務店はその傘下に配置すればいいだろう。傘下に入りたくない技術を持った工務店は、メンテナンスとリフォームを担当させればいい。わが国のホームメンテナンス市場は地域工務店がしっかりと守っている。これは日本の住宅産業革命なんだよ!
N:でも工務店や建築家がそんなに簡単に従いますかね。
A:馬鹿だなぁ、従わせる必要なんか無いよ。彼らが自主的に辞めたくなるようにすればいいんだよ。
N:で、どうやって?
A:少しは自分で考えなさい!曖昧な基準と運用で市場を混乱させ、違反者には厳罰を持って処し、意味も無い書類をやたらに添付させ、ことごとく嫌味な文句をつけてなかなか確認をしない。これだけ嫌がらせをされたら、まともな人間だったら誰でも辞めたくなるだろう。
N:なるほど・・・。
A:完璧を狙うなら2段階に締め付けなさい。小住宅にも厳しい構造計算を義務付ければ、工務店や建築家なんて、ほとんどが構想計算できないから諦めるよ。
N:でも、そこまでやったら、ハウスメーカーの団体が黙っていないでしょう。彼らから多額のサポートを受けているからなかなか先生たちが・・・。
A:だから、型式認定でハウスメーカーには今より負担を軽く確認が下りるようにすればいいんだよ。彼らから感謝されるぞ。
N:なるほど・・・そういうことですか。でも、ノンリコースは、親父が亡くなったら家族は家を出なけりゃならないのでしょう?それはちょっと・・・。
A:だから、生命保険をペアにするんだよ。そうすればいざという時お金が下りるから、家族は幸せに住み続けられるって訳さ。住宅融資と生命保険業務をこちらに任せてくれよな、悪くはしないから。
N:そういうことでしたか、さすが先進国は違うなぁ。早速耐震偽装マンション探します。
あくまでもこれはフィクションですから、登場する国や団体には一切のかかわりがございません。
加藤さん、いやな夢を見てしまいました。正夢にならない様に私達は目を光らせていないといけませんね。家づくりは保険や保証に守ってもらうのではなくて、住まい手とつくり手の信頼関係の上に成り立たないとおかしいと思うんです。ましてや外圧で法律や制度を変えてしまうなんてどうかしています。業界の悪いところは真摯に見つめ直し改善し、信頼できる業界にしていかなくてはなりませんね。そして国も今回の失態を謙虚に反省し学習して、平成21年12月の4号建築特例廃止時に今回のような混乱を招かないようにしていただきたいものです。私達地域工務店とって、本番の台風は4号特例廃止時にやってきますから。
加藤さん、住宅って社会の資産であり、個人のものであると同時に地域のものでもあると思うんです。だから法令順守というお役人的なことよりも、地域の実情からその地域に生まれ育った、地域の掟みたいな暗黙のルールが優先されるべきだと思います。コンプライアンスよりコモンセンスですね。
2007年10月14日 13:30 by カトラーの読者です
カトラーの最新エントリー記事で、このブログを知りました。工務店も大変ですね。でも、一般人からすると、アネハみたいな業者だらけに見えてしまうのが、住宅業界です。いつも騙されたり、何か嘘を言われているみたいで、一言でいえば信用できないのです。そうじゃない!という情報発信が必要ですね。そうじゃないと、アメリカから言われても、外圧だったとしても、いい住宅が、それも資産価値を有した住宅になるのなら、ほとんどの日本人は「イエス」と言いそうです。今までも、アメリカの言うことを聞いて、豊かになった経験があるのですから。